ご先祖調べの今 ~家蔵資料が失われている
戸籍史料と並び、ご先祖調べに必須の資料が家に伝わるご先祖様の記録、先祖祭祀の記録です。
つまり、墓石・位牌・過去帳・文書記録のことです。
実はこれらの重要記録が急速に失われています。
墓地の建替えや仏壇の整理による古い記録の処分、転居や第三者への貸与による紛失、火災による焼失など、様々な理由で先祖記録が失われていっています。
さらに悲しい現実は、このことに関連して無縁となる先祖が増えています。
墓地調査をすると、供養されることなく放置されている墓石を見つけることがあります。
その横には「この墓石の所有者はご連絡ください。○○寺」という看板が立っています。看板があればまだ良い方で、墓石はくずれ、草木に覆われ、周囲からも忘れ去れた墓もあります。「魂抜き」が成されていたとしても、実に寂しい光景です。
墓地調査ではそのような無縁墓の中に、ご先祖様の墓を発見することもあるのです。
次に跡継ぎの問題もあります。
ご存知のように、「本家を守る」「本家を継ぐ」ということは容易ではありません。
現地調査をしてみると、故郷を離れた本家筋は少なくありません。仕事や経済的な事情で地元を離れざるを得ない場合もあるでしょう。
転居した本家の消息が分かれば良いのですが、絶家廃絶や消息不明になっているケースもあります。
本家には先祖の歴史を知る上で貴重な史料や伝承が残されます。
それが庄屋や町年寄、宿場本陣など、村全体の文書が残る旧家であれば、実に残念なことになります。
近年、郷土史研究が進み、自治体による古文書調査や収集が行われているとはいえ、不明となっている古記録は数多くあるのです。